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#1 Shining Boy & Little Randy (坂本龍一) の出だしのハーモニー

このブログでは時々ですが、自分が気に入っている曲などのを一部をジャンルを問わず個人的な見解で音楽解説、という形で紹介できればと思っています。少し難しい内容となっていますが、曲の深みを楽しめると思うので音楽を聴きながら是非読んでみてください。

第1回目の今日は『星になった少年』という坂本龍一(Ryuichi Sakamoto)が音楽を担当した映画のテーマ曲”Shining Boy & Little Randy”です。今回はこの曲の出だしのハーモニー部分について少し解説したいと思います。

音楽動画リンク:Shining Boy & Little Randy

以下がその曲の出だしです。

この出だしの特徴は不安定と安定のせめぎ合いにあります。3つの不安定を感じさせる要素と2つの安定を感じさせる要素により、繊細な世界観が生まれています。ではその要素をみてみましょう。

・不安定要素1:アウフタクトで1度の和音を装飾的に聴かせて4度の和音で始まる

まずこの曲は調号からもD majorの調の曲だということがわかります。通常であれば、レ・ファ♯・ラで構成されるD majorの和音で始まる形が一番安定します。しかし、この曲は一小節目D majorの調の4度にあたるソ・レ・ファ♯・シ・ミのG major系の和音で始まっています。

始まりの和音はG majorではないのでは?、と思われるかもしれませんが、この最初のD majorの和音はアウフタクトと呼ばれ、曲の始まりを装飾する役割を担っている、いわば"枕詞"のようなものです。

つまりは本来の調であるD majorの和音をアウフタクトで装飾的に聴かせた後にG majorの和音で始まるという、不安定を感じさせる形になっています。

・不安定要素2:on chordでの始まり

次にアウフタクトの左手に注目してみましょう。先ほどD majorの和音と書きましたが、左手のベース音はファ♯。これは本来のD majorの和音からベースであるレを抜いたオンコードと呼ばれる形となっています。ベースが無い和音ですので浮遊感があり、これも不安定要素につながります。

・不安定要素3:常にメロディーがテンションコードを形成

では、次は同じくアウフタクトの右手をみてみましょう。メロディーも和音として考えると、和音はラ・レ・ファ♯・ド♯。これはD majorにテンション音であるドの♯が加わっています。そのまま小節を進めてみても常にトップのメロディーがテンション音で形成されていることがわかります。

※テンション音とは = ベース音、3度、5度で構成される安定した三和音の基本の形にそれ以外の度数の音を足すというもの、またはそれらを含んで構成される和音。major(明るい)やminor(暗い)の三和音にはない繊細なニュアンスを表現している。

① D majorの和音でド♯が7度にあたるテンション音

② G majorの和音でファ♯が7度、ミが13度にあたるテンション音

③ A majorの和音でソが7度、シが9度にあたるテンション音(メロディーの一部ファ♯も13度にあたる)

④ B minorの和音でラが7度、ド♯が9度、ミが11度にあたるテンション音

・安定要素1:ベースの順次進行と連続5度

まずは左手のベースに注目してください。上の画像をみるとわかりますが、音がファ・ソ・ラ・シと順次進行、つまりは2度ずつ隣の音に移動しています。これが安定要素の1つ目です。これは和音がファとド、ソとレ、ラとミという5度で形成されていますのでより安定しています。なぜ5度が安定するのか、というのは倍音などの要素も関わってきますので、またの機会に説明したいと思います。

・安定要素2:ベースの上昇とメロディーの下降

最後の要素です。上で述べた通り左手のベースが順次進行で上がっていくのに対し、メロディーはラ・ファ♯・ミと下降しており、2方向から中心に向かう形となっています。これはクラシック音楽でも基本的な音の進行となっており、非常に安定しています。

以上の5つの要素により、この曲の出だしのハーモニーはまるで色々な感情がせめぎあっているような繊細な音色になっています。

もちろん今回は解説しきれませんでしたが、曲全体には他にも様々な要素が散りばめられているので、聴きながら是非考えてみてください。

次回はクラシック音楽ロマン派から1曲紹介したいと思います。

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